私はクラウドERP自体はとても良いシステムだと思っているし、システムコンサルタントとして中小企業は特に導入することをオススメしている。しかし私に相談のある企業で、すでにクラウドERPを導入している企業からは、クラウドERPが使いにくい、システムを変えたいという相談が多いのだ。これには複数の原因があるので今回はその内容を書いてみようと思う。
ERPに詳しい人が周りにいなかった
よくあるパターンとして、中小企業の代表者が、直接ベンダーと話を進めてERPを導入してしまった場合が多い。私のようなシステムコンサルタントがついていなかったり、社内にシステムに強い人間がいないなどが理由で、自分で進めてしまったという場合に起こりえる。 クラウドERPといえば、業務システムの○○管理と○○管理が一緒に出来ます。という売り文句でERP製品メーカーから提案をされることがほとんどなのだが、その営業をされている段階で大きなズレが生じてしまっているのだ。
製品メーカーの営業マンを疑う
お世辞にもシステム関係の営業マンというのは優秀で、お客様目線ではないなと感じることが多い。
営業マンは2パターンだ。
まず1つ目は、営業マン自体、自社製品をわかりきっていない、システム開発について理解していないなど、業界の知識不足で、あくまでも商品を売るだけの人間である。このようなタイプの営業マンは導入後、ほとんどが「営業段階でこれが使えると聞いていたのに、使えない!」というトラブルが発生するわけだ。 こうなると、ユーザーからすると、システム開発にお金を払ったうえ、思っていたのと違うものが出来てしまう。返金しろ!と思うわけだが、そうはいかない。揉めるに揉めて裁判沙汰になることも少なくない。 このような知識のない営業と、ユーザー側でも知識のない人間が窓口を務め話を進めていってしまうと大変なことになるので、あくまでも窓口はシステムに理解のある人間をアサインする必要がある。
そして2つ目は、システム上りの口下手な営業マンだ。システムには強いので、システム上出来る、出来ないの判断は出来る、さらに「こうする場合は、このような弊害がうまれる」などのリスクも教えてくれるので頼りがいを感じるのだが、決してコミュニケーション力が優れているというわけではない。もう少し詳しく言うと、自発的ではないということだ。 こちらから細かく要望などを言わないといけない。なぜなら、システムを熟知しているが故、「ここのユーザーは、この内容でいいんだな」という先入観を持ってしまっている場合が多いからだ。
結果として、満足出来るシステムに組みあがったとしても、後になって、「この機能も欲しい」と思って依頼すると、当然やってくれるわけだが、カスタマイズ費用もかかり、開発時間もかかる。もし営業マンから、色々提案を受けていれば、リリース時にほぼ完ぺきな状態のシステムが仕上がっていたのではないかと思う。
そういうわけで、まずはベンダーの営業マンの見定めが必要である。
社内の検討は2重、3重に
システムが使いにくいと感じる原因としてユーザー側にも原因がある。
まず、システム導入に向けて動く際は、決裁者、システムに強い人間、システムを利用する現場担当者の3名をプロジェクトにアサインしないといけない。ここでボトルネックになるのは「システムに強い人間」である。そう簡単に社内にいる人材ではないので難しい部分である。その為、このポジションは外注でも構わないのでシステムコンサルタントをいれるべきである。 そうすることで、社内としてどういうシステムが欲しいのか、導線であったり、UI、UXのデザイン、既存のシステムとの連携、今後会社としての事業の方向性、そこで発生するであろう業務。このあたりを明確にすることが出来る。そうすることで、ERP開発時に漏れがほとんどなく、また将来を見据えた設計にすることで寿命の長い社内業務システムとして活躍が期待できる。
このシステムコンサルタントを軸に、現場担当者の意見を吸い上げることで、より使いやすいシステムとして改善される。実際に利用するのは現場担当者がほとんどなので、現場の声は大変貴重である。要は使い勝手が悪いと、現場の人間がシステムを使いこなせず、結果「使いにくいシステム」として認識されてしまうわけである。
これからの社内統制がまとまったら、最後は決裁者によって導入に向けスケジューリングをベンダーと行っていく。というのが一番スムーズであるわけだ。
まとめ
今回はなぜ活躍するはずのERPが「使いにくいクラウドERP」として社内で認知されているのかの原因を探ってみた。該当する内容はあったであろうか。 使いにくERPのほとんどが設計時のヒューマンエラーで起こるもので、しかもユーザー側にも原因があるので、システム導入については常に複数人で選ぶことをオススメしたい。